国立西洋美術館は第二次世界大戦後フランス政府に差し押さえられていた松方コレクション(株式会社川崎造船の社長松方幸次郎がヨーロッパで収集した西洋美術作品)の寄贈返還を受けるために設立されました。1955年寄贈返還における条件の一つとなっていた新しい美術館のために、日本政府はル・コルビュジエに設計を依頼しました。国立西洋美術館は日本で唯一のコルビュジエの建築作品です。
ル・コルビュジエはスイスに生まれ主にフランスで活躍した建築家で近代建築の三大巨匠の一人です。合理的、機能的で明快なデザイン原理を追及し、20世紀の建築や都市計画に大きな影響を与えました。鉄筋コンクリートを利用し、装飾のない平滑な壁面処理、伝統から切り離された合理性を信条としたモダニズム建築の提唱者でもあります。
これらのことから鉄筋工事に携わっている私たちにとって国立西洋美術館は特別な建築物の一つといえます。幸いなことに6月8日に訪問する機会に恵まれました。
コルビュジエの建築を支えるのは彼自身が考案したドミノシステムです。鉄筋コンクリート製の柱とスラブが建物の荷重を支え、階段で上下をつなぐという単純な構造です。石やレンガを積み上げる旧来の建築と異なり、外壁や間仕切りに制約が少なく自由な平面を可能にします。また彼が唱えた近代建築の五大原則は1.ピロティ2.屋上庭園3.自由な平面4.水平連続窓5.自由なファサードです。
まず入り口がピロティになっており軽快で解放感があり、訪れる人々をやさしく迎えます。展示室に入るとすぐに吹抜けになった19世紀ホールがあります。建物を支える柱と梁をトップライトの部分であえて見せることで構造を象徴的に感じさせています。スロープを上りながら19世紀ホールの彫刻を視点を変えながら鑑賞しつつ2階の展示室へ向かいます。柱と床が水平垂直の美しさを強調し作品を際立たせているように感じました。美術館は基本的には作品が主役です。しかしここは建築自体も作品です。良い空間は展示作品も際立たせるのだなと感じました。そして私たちの仕事はその良い空間を作るには欠かせない仕事です。今回の訪問はそのことを強く認識する良い機会となりました。
※6月23日に行われたTETSU-1 GRAND PRIX 山口県代表予選会 および やまぐち建設産業魅力発見フェア NO.3 の模様は左のバナーの山口県鉄筋工業協同組合をクリックしてご覧ください。